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電子データの脆弱性 なぜ紙で保存するのか

少し前の話になりますが、修士論文を提出しました。2年間の研究の集積であるため、感慨深いものがあるようなないような。その際に少し気になったことがあったため、書き記しておこうと思います。

 

 

 

修士論文を紙で提出するように求められた

気になったのは、論文を提出する際のフォーマットです。なぜかで提出するように指定されました。電子全盛の今の時代にどうして紙なのと不思議に思ったのです。今まで大学や大学院での実験や実習のレポートはすべて電子データで提出していました。ではなぜいまさら紙なのか。

提出する際は以下のようなフォーマットで提出するように指定されました:

  • 論文の審査用に1部(片面印刷)
  • 製本用に3部(両面印刷)

修士論文というと、A4で10ページや20ページには収まらないため、これだけの部数を印刷するようになるとかなりのページ数になります。ですので、電子データで提出するのに比べて多くの手間がかかります。

それに加えて、電子データでの提出を求められなかった点も気になるところです。Word形式やPDF形式での提出は求められなかったのです。私の大学院では修士論文をインターネット上で公開するといったことはしませんので、そのためかな?とも考えたのですが、どうしても引っかかります。提出した論文をスキャンするのかなとも思いました。しかし、どうやら提出した紙でそのまま製本するようです。

どうして紙なのか。どうやらこれには電子データの脆弱性と保存媒体として紙の特徴が関係しているのかもしれません。それについて少し考えてみましたので、メモしておこうと思います。 

電子記憶媒体の動向

以下の記事では、今の若者がバックアップを取らないことが話題になっていました。

最近の若者は「バックアップを取る」という意識がない? - ITmedia Mobile

 

私は24歳ですので、最近の若者に該当するといってもおそらく問題ないと思いますが、私もクラウドストレージサービスのGoogle Driveを使用するまでは、バックアップらしいバックアップをとっていませんでした。そのため、携帯の機種を変更するたびに写真は消えていましたし、思い出のメールなんかもなくなってしまっていました。今のところGoogleの各種サービスを使用していますので、そういった心配はなくなりました(Googleがサービスを終了しない限りではありますが)。

もし、携帯のデータをバックアップするならば、以前はSDカードに入れていたことと思います。しかし、私が今使用している携帯電話、Nexus6PにはSDカードを挿入する場所がありません。そのため、SDカードからデータを取り出したいと思った時は、少し面倒な作業が必要になります。

ところで、私が小学生のころ(10年以上前)は、データの保存媒体としてフロッピーが普通に使われていました。そのころ家にあったパソコンのOSがWindows 98だったことも付け加えておきます。このころは、家に山のようにフロッピーがおいてありました。私の母はこういった類のものが好きで、データや写真を次々にフロッピーに記憶させていました。こういった実情は次に示すグラフでもお分かりいただけるでしょう。次のグラフは、フロッピーの普及率を示したものです。

引用)パソコン用記憶装置(HDD、FDDなど)の歴史<パソコンの歴史<コンピュータの歴史<歴史<木暮仁

 

これを見てもわかるように、フロッピーは生産され始めておよそ10年でピークに達し、その後急速に減少しています。

フロッピーなどの記憶媒体から、データの取り出しなどを行っているオークインメディアサービス株式会社のホームページによると、1)フロッピーのディスク・ドライブが製造中止なこと、2)ドライブの劣化が深刻なこと、3)ディスクの劣化も深刻なことを理由に、フロッピーの他メディアへの変換を勧めています。

今実際に使われているPCには、フロッピーディスクドライブが付属しているものはほとんどないでしょう。もしそれが付属しているPCを持っていても、それ自体が劣化している可能性もあるため安心はできません。また、フロッピー自体も劣化しているとのことなので、なおさら安心はできないでしょう。

つまり、私が言いたいことはこういうことです。電子記憶媒体は急速に変化しており、それに情報を保存しておいても必要な時に利用できるとは限らないということです。こういった意味で電子は弱い、ということが言いたいのです。

紙の寿命

そういった意味で、情報はやはり紙で保存しておくのが良さそうです。紙の寿命について、株式会社京富士印刷のホームページで以下のように記されています:

 紙には大きく分けて、洋紙と和紙があります。洋紙というのは西洋から伝えられた作り方で製造されたもので、現在一般的に流通している9割程は洋紙と言われています。逆に和紙は和をイメージした製作物や芸術品等、特殊な用途に使われる事が多いです。洋紙の寿命は100年程ですが、和紙の寿命は1000年と言われています。

 

 日本で洋紙が用いられてきたのは100年以上前の話です。つまり現在では、劣化の問題はすでに生じているものと考えられます。

 歴史上にあった問題として、1980年代に、洋紙劣化の問題が起きました。図書館に保存されている書籍が茶色く変色し、粉々になってしまうことがあったようです。日本で最初の洋紙が生産されたのが1874年である事から、寿命通りの劣化が起きたのです。

 

紙の寿命は、酸の性質をもった硫酸アルミニウムを使用していたためです。ですので、現在では以下で示すように、そういった問題の生じにくい「中性紙」が使われているとのことです。

 この問題の対応策として、劣化の原因である、硫酸アルミニウムを使わない中性紙という紙も開発され、寿命も300~400年と長くなっています。現在使用されているほとんどが中性紙です。

 

結論としては、長期間にわたって保存が必要な情報は紙がベストだろうということになります。フロッピーが生産され始めたのが1985年で、それから30年たった現在では、フロッピーをほとんど利用することができない、という急速な変化がった現状を考えると、電子データを信用し切るのは難しいかもしれません。紙には火災や水没、カビといった諸問題もありますが、それを補って余りあるほどの優位性が紙にはあると考えた方が自然だと思います。

なお、今回の記事では、問題としたのは情報の保存媒体としての紙と電子であって、よく言われている読書媒体としての紙と電子ではありません。そのことを留意点として、最後に示しておきます。